概要

 神経生理学教室のホームページにご来訪いただき、ありがとうございます。
 当分野は平成24年に開講90周年を迎えた歴史ある教室であり、これまでに国内外で活躍する多くの神経生理学者を輩出してきました。生理学は生体が機能するしくみ(メカニズム)を明らかにしようとする学問です。私たちの教室ではその中でも脳機能の理解を目指して日夜研究を行うとともに、医学研究科・医学部を中心に脳科学分野の教育を担当しています。

 現在、脳に関しては多くのことが明らかにされています。主にヒトを対象とした研究により、脳の「どこ」が特定の機能に関係しているのか詳しく調べられていますし、マウスなどを用いた研究によって、脳が「なに」で構成されているのか非常に多くの報告があります。しかし、脳各部のニューロンが実際にどんな情報をもっていて、それらを「どのように」処理することで普段の私たちの行動や精神活動が生じているのか、脳機能の本質ともいえるそのメカニズムについては、まだ多くの問題が手つかずのままです。

 私たちの教室では、ヒトに近い脳をもつサルに様々な心理実験課題を行わせ、その際に脳の各部がもつ情報を神経細胞のレベルで調べています。また、局所への薬物投与や電気刺激などにより、ニューロンがもつ信号の生成に様々な機能分子がどのように関与し、さらにその信号が行動の制御にどう使われているのか解析を行っています。このように丸ごとの脳を情報システムとしてとらえ、その動作原理を明らかにすることは、私たちの心のメカニズムを理解するだけでなく、脳の一部の損傷や細胞分子の異常によって生じる精神・神経疾患の病態を解明することにつながります。また、将来的には脳の情報を取り出して利用する医用工学や、脳深部刺激などの新たな治療法の開発にも貢献することができると期待されます。

 大学は知識と人材があふれ出る社会の泉でなくてはなりません。これまでのシステム神経科学研究の流れを継承しつつ、新しい考え方と人を積極的に迎え入れて、私たちに託されたこの小さな泉を枯らさぬよう日々努力していきたいと思います。今後ともご理解とご支援をお願いいたしますとともに、脳機能のメカニズムに関心をもつ様々な分野の方が私たちの教室を訪れて下さることを心より願っています。

  神経生理学分野 教授 田中真樹
教授略歴
1988年   甲陽学院高校 卒業
1994年   北海道大学医学部 卒業
1998年   同大学院 修了
1998~
2001年
  ハワードヒューズ
医学研究所研究員(UCSF)
2001~
2010年
  北海道大学医学研究科
助手、講師、助教授、准教授
2006~
2010年
  JSTさきがけ研究者(兼任)
2010年11月 現職


教室沿革

1922年(大正11年) 生理学第二講座開講(初代教授 朴沢 進 就任)
1955年(昭和30年) 二代教授 藤森聞一 就任
1974年(昭和49年) 三代教授 加藤正道 就任
1996年(平成 8 年) 四代教授 福島菊郎 就任
1998年(平成10年) 大学院重点化により、統合生理学講座認知行動学分野に改称
2007年(平成19年) 改組により、講座名が生理学講座になる
2010年(平成22年) 五代教授 田中真樹 就任
2012年(平成24年) 神経生理学分野に改称